Root canal treatment

根管治療

根管治療とは?

根管(こんかん)とは、歯の神経と血管で構成された「歯髄(しずい)」が収まっている管です。健全な歯では肉眼で確認することはできず、むし歯によって歯質が溶かされると、口腔内に露出するようになります。これを専門的には「露髄(ろずい)」といいます。根管治療は、そんな露髄した神経・血管を取り除き、根管内を無菌化する処置を指します。

根管治療の対象

むし歯が進行すると、エナメル質・象牙質を溶かし、やがては歯髄にまで感染が広がります。いわゆる「C3」まで進行した虫歯が、根管治療の対象となります。神経まで達した虫歯は、歯質を削るだけでは治せなくなるのです。もちろん、むし歯菌に感染した歯冠部の歯質は、通常通り削ることになりますが、その後、歯の神経を抜く「抜髄(ばつずい)」と根管内を清掃する処置を行わなければなりません。

抜髄とは?

抜髄とは、歯に酸素や栄養素などを供給する歯髄を抜き取る処置です。主に、むし歯菌の感染によって保存不可能となった場合に適応されるのですが、外傷で歯に強い衝撃が加わり、歯髄が死んだ(=失活した)場合でも抜髄を行うことがあります。抜髄をすることで、歯がズキズキと痛むことはなくなります。また、細菌感染が歯の根の先にまで広がるのを抑えられます。

根管治療の流れ(抜髄を含む)

根管治療は、以下の流れで進行します。

1

麻酔処置

歯の神経を麻痺させるために、局所麻酔を施します。5分ほど経過すると麻酔の効果が現れ、歯の感覚が麻痺します。

2

歯に穴を開ける

歯髄を抜き取りやすいように、歯の表面を切削します。麻酔が効いているので痛みを感じることはありません。

3

ラバーダムの装着

処置中に根管内が汚染されないよう、ラバーダムというゴム製のシートを装着します。患者様ご自身の唾液の侵入が抑えられ、無菌的な環境で根管治療を進められるようになります。

4

歯髄を抜く処置

歯髄を専用の器具で抜き取ります。必要に応じて手用のものと電動のものを使い分けます。

5

根管内の清掃

細くて暗い根管内は、針のような形をしたリーマーやファイルでお掃除します。これらの器具にはらせん構造などが付与されており、根管内に出し入れすることで汚染物質を絡めとることができます。

6

根管内の消毒

根管内に水酸化カルシウムなどのお薬を塗布し、消毒します。根管内が汚染されないよう仮のふたで閉じたらその日の処置は終了です。この処置は、根管内が無菌化されるまで繰り返します。

7

根管充填

根管内の汚染物質をすべて取り除けたら「根管充填(こんかんじゅうてん)」を行います。根管内にガッタパーチャという特殊な材料を詰めて、再感染を防ぎます。

8

コアの築造

穴があいた部分にコアと呼ばれる被せ物の土台を作ります。

9

被せ物の製作・装着

最後に、人工歯である被せ物を製作・装着して治療は完了です。

ラバーダム防湿について

根管治療を適切に進めていく上で「ラバーダム防湿(ぼうしつ)」は欠かせません。唾液は無色透明で、一見すると清潔に見えるのですが、その中には無数の細菌が含まれています。ラバーダム防湿を行わずに根管治療を実施すると、患者様ご自身の唾液が侵入して根管内を汚染してしまいます。ラバーダム防湿では、治療を施す歯以外をゴム製のシートで覆うことができるため、清潔な環境で治療を行うことが可能となります。治療に用いる小さな器具の誤飲誤嚥の防止という観点においても、ラバーダム防湿は有用といえます。

感染根管治療について

感染根管治療とは、歯髄が細菌感染によって壊死(えし)し、細菌や壊死組織などで汚染された根管内を清掃する処置です。過去に受けた根管治療で病変の取り残しなどがあり、再び細菌の活動が活発化したケースなどが該当します。処置の流れは通常の根管治療とほぼ同じですが、難易度が大きく異なります。根管内全体が汚染されていることもあり、必要となる処置の回数も多くなる傾向にあります。

根管治療(保険内治療)の成功率が低い理由

保険内で行う根管治療の成功率は、50%以下と極めて低くなっています。それは次のような理由があるからです。

◎根管は細くて複雑な構造を呈している

歯髄が収まっている根管は、細くて暗く、複雑な構造を呈しています。肉眼では、その入り口しか確認することができず、盲目的処置になりがちです。つまり、歯科医師の勘や経験に左右される処置となっているのです。これはマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使える保険外治療との大きな違いです。

◎根管の壁は傷つきやすい

根管の内側を構成している壁は、極めて繊細です。根管内の汚れをファイルなどで強引に除去しようとすると、容易に傷つきます。とくに注意が必要なのが「彎曲根管(わんきょくこんかん)」です。先端に向かうにつれ、カーブしている根管のことで、保険診療で使用する器具ではなかなか対応が難しいです。標準的なステンレススチール製のファイルで切削すると、根管がいびつな形態となり、病変をきれいに取り除けなくなることも珍しくありません。最悪のケースでは、根管壁に穴があく「パーフォレーション(=穿孔)」が起こります。

精密根管治療(保険外治療)

保険外治療では、マイクロスコープやNi-Tiロータリーファイル、根管治療専用の超音波器具などを使用することができます。

マイクロスコープとは?

マイクロスコープとは、歯科用に改良された顕微鏡で、術中の視野を肉眼の8~40倍程度まで拡大できます。術野にはライトも照射されることから、肉眼では確認できなかった根管の細かな構造まで、しっかり把握できます。当院では、ドイツの光学機器メーカーとして有名なライカ製のマイクロスコープを導入しております。

Ni-Tiロータリーファイル

Ni-Ti(ニッケルチタン)ロータリーファイルとは、根管内を清掃するための器具です。ニッケルチタンは柔軟性が高く、カーブした根管にも滑らかに追従しならが、汚染物質を取り除けます。根管壁を傷つけたり、穴を開けたりするおそれが極めて低い、有用な器具です。

当院では、これらの器具を活用した「精密根管治療」を実施しております。

保険診療での根管治療について

当院では、保険診療での根管治療にも対応しております。ただし、保険内では治療にかけられる時間や使用できる器具・機材に制限が設けられています。そのため、1回あたりの治療時間は15分程度しか確保できず、治療回数も5~10回とかなり多くなってしまいます。また、マイクロスコープを用いた拡大視野での処置が不可能であるため、自ずと治療の成功率も低下してしまいます。

他院で抜歯と診断された方へ

根管治療は極めて専門性の高い分野です。必要な人材や器材、設備などが揃っていないと、外科的歯内療法を選択できないこともあります。そのため、他院で「抜歯する他ない」と診断されたケースでも、当院なら抜かずに残せる可能性も十分にあります。根管治療がなかなか終わらない、繰り返し再発する、という方もまずは当院までご相談ください。尾澤歯科医院なら、精密な根管治療を実施することが可能です